パンデミック条約、WHO年次総会で採択へ大筋合意 “病原体共有”とワクチン10%無償提供も規定

パンデミック条約の大筋合意を伝えるアイキャッチ画像。WHOのロゴ、世界地図、人々のイラストとともに、「2025年WHO総会で採択へ」などの文字が配置されている。

世界的な感染症対策の新たな枠組みとなる「パンデミック条約」が、2025年4月12日、スイス・ジュネーブのWHO本部で最終協議を迎え、大筋で条文案が合意されました。正式な採択は、来月開催されるWHO年次総会(世界保健総会)で行われる予定です。

パンデミック条約は、COVID-19の教訓を踏まえ、将来の感染拡大に備える国際的なルールづくりを目的として、2022年から加盟国間で協議が続けられてきました。

合意された条文案では、各国がパンデミック予防の包括的な計画を策定し、途上国のワクチンや治療薬の生産体制を強化することが盛り込まれています。特に注目されるのは、「PABS(病原体アクセスと利益共有)」という新しい情報共有システムの設立です。

この枠組みに基づき、製薬企業が共有された病原体情報をもとに開発したワクチンなどについて、パンデミック発生時に最低10%をWHOに無償提供することが義務付けられる予定で、今後さらに詳細な協議が行われます。

ただし、一部の国では「国家主権の侵害」や「製薬企業の利益圧迫」といった懸念も根強く、アメリカは2025年2月に交渉からの離脱を表明。条約の実効性を左右する動きとして注目されています。

WHOのテドロス事務局長は、「同じ過ちを繰り返さないため、この条約は不可欠。次の世代を守るために必要な枠組み」と述べ、各国の協力を強く呼びかけました。

来月の総会で正式に採択されれば、パンデミック対策の国際ルールが初めて明文化されることになります。国際的な枠組みの行方、そしてアメリカをはじめとした主要国の動向が、今後の世界的な感染対策の鍵を握ります。

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